宇内金属工業株式会社

金属・革加工品製造

宇内金属工業株式会社

革小物ブランド「clife」やバッグブランド「Caramel」を手掛ける宇内金属工業。
ライフスタイルに馴染むデザインでありながら、どこか個性的で機能美が宿るアイテムの数々はどのように生まれたのか・・・
宇内金属工業へ伺い、すべてを自社一貫で行うその現場から、製品づくりに携わる大橋さん、中村さんよりお話を伺ってきました。

宇内金属工業株式会社

事業と製品づくり

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事業と製品づくり

事業と製品づくり

宇内金属工業では、どのような事業をメインで行っているのでしょうか?

主に、ベルトやベルトパーツをつくる装身具事業、自動車のシートベルトなどをつくる安全バックル事業、金属部品の加工事業の、3つの事業を行っています。
私たちは、その中の装身具事業部で、製品のデザインから製作までを一貫して行い、お取り引き先である企業様に向けたOEM製品の製造がメインとなります。

ベルト
ベルトパーツ
オリジナル製品をつくりはじめるきっかけは、何だったのですか?

装身具事業部では長い間OEM製造を行っており、基本的にはお取り引き先である企業様のご要望や、そのブランドの世界観に沿って製品づくりをしているのですが、やはりエンドユーザーのお客様の顔が見えない環境での製品づくりに、どこかもどかしさも感じていました。
きちんとお客様を想定し、これまで培ってきたノウハウを活かしながら自分たちのこだわりを乗せたものづくりがしたいという思いから、自社のオリジナル製品づくりに着手しました。

一番最初にできたオリジナル製品を教えてください。

最初の製品は、「クリップ・アンド・ライフ」という真鍮のクリップです。
ベルトの製造技術を活かし、型抜きと曲げ加工によってつくられています。
この製品がすべての始まりであり、ゆくゆくのブランドイメージの根幹になってゆきます。

クリップ・アンド・ライフ
クリップ・アンド・ライフ
製品のアイデアはどこから生まれるのでしょうか?

つくるアイテムを決める際は、展示会などに出向いて市場調査をすることもありますが、大半は外へ出かけてそこにある風景や道行く人を観察することで、アイデアを練ることが多いです。
街を歩く人の服装や様子から、その人のライフスタイルを想像し、そこに馴染むアイテムの形を考えていくようなイメージです。
そこにある風景も含めて、その全体の雰囲気をベースに製品のイメージをまとめていくようにしています。
その街にアイテムが溶け込んで、風景の一部として成り立っているような、生活にフィットするデザインが理想です。

イメージを固めた後は、どうやって製品づくりを進めていくのですか?

頭の中に浮かんだデザインイメージをもとに展開図を考えて、自分でミシンを動かして試作品を作っていきます。
金属や革の素材が充実している環境なので、すぐに試作品をつくることもできますし、基本的にはすべて自分ひとりで行っています。
おおよその形状を決めてから、その後ディティールを詰めていく作業に最も時間がかかりますね。

これまでつくられてきたものとは全く違うアイテムですが、これまでに何か、ものづくりの経験があったのですか?

仕事の中では主にベルトのデザインをしていますが、大学ではプロダクトデザインを専攻し、プライベートでレザークラフト教室に3年間通っていたので、そこで得た知識や技術が役立っていますね。
ただ、知識はあれど実際に製品をつくる中で改めて学ぶことはとても多いです。

オリジナルブランド
「clife」について

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オリジナルブランド「clife」について

オリジナルブランド「clife」について

clife

clife

金属、革を使用した雑貨で心地良い日々を生み出すライフスタイルブランド。
“clife”という名前には、アイテムを通して「モノガタリ」をつくる上で目標とする『creative life products』という想いが込められている。

ブランド立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?

もともと、最初の製品「クリップ・アンド・ライフ」を企画した当初より、ぼんやりとブランド展開の構想がありました。
その後、「コーヒー・アンド・ライフ」という名前の革と真鍮を使用したコーヒーホルダーを開発。
この開発を通して、「clife」というブランドの人格のようなものが明確になり、イメージはやがてブランド立ち上げに至りました。
ちなみに、「clife」というブランド名は造語で、私たちが目指す製品イメージを言葉で表した「creative life products」の「creative」と「life」から生まれたんです。

コーヒーホルダー

「clife」のメガネケースが出来るまで

革を裁断

最初の工程ではまず、プレス機で革を裁断します。

革を裁断

革の状態をみて、取る場所を1つ1つ選んでいきます。

金具の抜き出し

つづいて、金具の抜き出しを行います。1枚の真鍮の板からパーツの形に抜いていきます。

パーツを組み立て

革と真鍮、それぞれのパーツを組み立てていきます。

縫い上げ

業務用の大型のミシンで一気に縫い上げます。

縫い上げ

革を縫う際に使用する針と糸は、通常の布で使用するものよりも太く、針穴が目立つため縫い直しが出来ません。
繊細な技術が必要な工程を経て、一点一点丁寧に作られます。

デザインをする上でこだわったところはどこですか?

よりシンプルなデザインに落とし込むということです。
名刺入れも、複雑だった展開図から、よりシンプルな作りを目指して無駄な要素を削ぎ落としていきました。
「clife」の製品は、革を畳んで一か所を留めるだけで成り立っているんです。
できるだけ簡単に、敢えて誰にでも作れてしまうようなデザインを心がけました。複雑な構造よりもシンプルな構造の方が、壊れるリスクも減るものです。
ただ、そんなシンプルなデザイン故の難しさもたくさんあり、なかなか時間がかかりましたね。

印象的な留め具のデザインについて教えてください。

リボンの形のような留め具は、実はアパレルで使われていたコートの前留めなんです。はじめに金具を見て、そこからこの金具を活かすデザインを考えました。

留め具
素材へのこだわりについて、詳しく教えていただけますか?

使うごとに味わいが増す素材にこだわって、長く使うことができる革や真鍮を選びました。

革について

「clife」の革は、植物タンニンでなめしたものを使用しています。
牛の革を植物の液(タンニン)に漬ける方法で、植物本来のいいにおいがするのも特徴です。
当初はドラム式という、革を回転させながら染めたものを使用していましたが、回転することで革がほぐされ、痛んでしまうことありました。
現在は、より良い革を求めて「ピット加工」という手法を用いています。
ピット加工は紀元前からある方法で、プールのように液を溜めたところに革を入れ、少し動かしながら付け込みます。ドラム式のように回転させないため、劣化が少なく、革にねばりやこしがあるのが特徴です。

革の加工
革の加工

真鍮について

金属部分の素材に関しては、ベルトのバックルをつくってきた経験から、高価でも真鍮を使いたいと思っていました。
研磨などの加工がしやすかったり、メッキ加工なしでも錆びないという利点ももちろんありますが、それ以上に真鍮には大きな魅力があります。
例えばアンティークのドアノブや古い建物の手すりのように、長年使われることで味のある変化を楽しめる金属なのです。
組み合わせる革も同じように、使い込んでいくことで味わいがでる素材という点で、相性もいいですしね。

真鍮の魅力
生産工程で難しいポイントはありますか?

人間と同じで革は生き物なので、ひとつひとつに違いがあり、面白い素材です。
しかしその分個体差があり、それを加味して裁断をしなくてはならないのが難しい点ですね。
1枚として同じものがなく、また部位によって革の伸びる方向やムラ感、皺が異なるので、それぞれの革の状態を細かく見ながら工夫して裁断します。
特に牛の脇の下がムラ感がでやすいんですよね。
そういった点から、革の裁断は機械任せではなく、社内で1つ1つ手作業で行われているんです。

オリジナルブランド
「Caramel」について

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オリジナルブランド「Caramel」について

オリジナルブランド「Caramel」について

Caramel

Caramel

生地、革、金具と、パーツのすべてにこだわった、シンプルでナチュラルなバッグブランド。「キャラメルを口にした時のホッとするような幸福感、安らぎ」を感じられるような、スタンダードかつ特別感のあるデザインが特徴。

ブランド立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?

昔、プライベートでレザークラフトの教室に通っていたので、そこで学んだ技術を活かせる新たなアイテムに挑戦したいと思ったことがきっかけです。

「Caramel」のトートバッグが出来るまで

パーツを裁断

型紙に合わせ、展開図から1つ1つパーツを裁断していきます。

パーツを裁断

切り出しには中村さんが自ら作ったオリジナルのカッターを使います。

革の抜き出し

ハンドル部分の革はプレス機で抜き出します。

パーツを組み立て

帆布と革、それぞれのパーツを切り出したのち、工業用ミシンで縫い上げます。

縫い上げ
縫い上げ

帆布と革は厚みも固さもあるので、重ねて縫い合わせるのには経験が必要です。

縫い上げ

平面の展開図からだんだんと立体的に組みあがります。

金具で取り付け

最後にショルダーベルトを金具で取り付けて完成です。

完成
シンプルかつ特徴的な形のCaramelのバッグですが、今の形になるまでの経緯を教えていただけますか?
ショルダーバッグ moon

moonシリーズは、街に出てデザインアイデアを考える段階で、ぼんやりとではありますが、まるいシルエットを想像していました。
ただそこから、取り出し口の形状を蓋にするのか、ファスナーにするのか、など試行錯誤があり、試作品を作っては実際に自分で使って、使用感を確かめていきました。
現状の形になるまで10数パターンはつくりましたね。

トートバッグ oneday

onedayシリーズのデザインは、ユニセックスなテイストで、手に取って落ち着くようなデザインを目指しました。
特にこだわったのはバッグの持ち手の部分。
シンプルな形であるからこそ、微妙なディテールにこだわり、試作を重ねて、カーブ曲線や角度、大きさを決めていきました。
初期のCaramelの製品に使用した生地は、切りっぱなしでもほつれないよう、帆布と帆布の間にゴム素材を挟んだ生地を使っていましたが現在はそのような仕様でなく、日本の帆布の由来となり、アメリカ合衆国発祥のダックという丈夫で防水性のある生地を使用しています。

今後、どのような展望がありますか?

現状、展開している製品ラインナップについては、これから先も時代に合わせた要素を取り入れていきたいと思っています。
例えば、今の市場の流れを意識したアイテムで言えば、コンパクトなお財布が流行っているので、それを私たちならではのデザインに落とし込み、世の中にまだない新しいコンパクト財布を作るとか。
ゆくゆくは自社の強みである、金属加工の技術を使って、デザインと機能性を兼ね備えたインテリアグッズをつくってみたいとも考えています。

訪問して

主力商品である「ベルト」から、現状に甘んじることなく、新しい商品を次々と生み出す宇内金属工業。
日常を彩る素敵な商品たちは、ただ新しいだけでなく、長年培われてきた技術があってこそのものでした。
ものづくりを続けていくことの難しさと面白さを、改めて感じる機会になりました。