昇苑くみひも

京都宇治 組紐工房

昇苑くみひも

1948年、京都宇治にて創業。当初は着物の帯締めという需要に応えるべく、職人による「手組」を中心に生産を開始する。その後、業界内でもいち早く機械を導入し、帯締めのみならず和装小物(髪飾り・帯飾りなど)の製作にも着手。以降、「お客様のニーズをどのように組紐で形にしていくかを考えていく」という創業当時からの理念のもと、ものづくりの道を歩み続けている。
2014年4月に宇治の工場付近にアンテナショップを、翌5月には京都高台寺に直営店舗「SHOWEN」をオープン。より生活に根ざした組紐の商品を展開。

昇苑くみひも

宇治川に架かる、日本三古橋のひとつに数えられる宇治橋。そこからほど近く、平等院鳳凰堂へと至る旧参道脇の閑静な住宅地、その一角にあるのが昇苑くみひもの工場です。工場のすぐそばにあるアンテナショップでは、組紐を用いてつくられたストラップやブレスレット、コースターなどさまざまな雑貨が販売されています。
組紐と言えば、昔から着物の帯締めとしてつかわれてきたものというイメージ。映画の影響などで近年再び注目を集めつつありますが、昇苑くみひもはいち早く組紐を活用した雑貨商品を展開してきました。

宇治の町に息づく伝統産業

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宇治の町に息づく伝統産業

宇治の町に息づく伝統産業

組紐を組む工程は生産性を上げるべく基本的には機械化されていますが、機械を動かすまでの糸を準備するところや、おもりや歯車の細かい調整はすべて経験豊富な職人さんの手作業によるもの。また、できた組紐をそれぞれ帯紐やアクセサリー、その他さまざまな製品に仕上げるのも職人さんたちの高い技術力なのです。

「組紐をつくる過程」

組紐をつくる過程

工場に入り、組紐をつくる過程を見せていただきました。引き戸を開けると響き渡る、カシャンカシャンと機械が忙しく動く音。京くみひもは伝統的に、糸染は糸染、組みは組み、房づくりは房づくり、と工程ごとに工房が分かれていましたが、近年ではそれも激減しているとのこと。昇苑くみひもでは染めから完成形までをワンストップでおこなっています。

染め
染め

生糸を着色する工程。基本的には化学染料で染めていますが、最近は幅を広げるべく天然染めも研究中とのこと。
染め上がった糸はボビンに巻き取られます。

経尺(へじゃく・へいじゃく)
経尺(へじゃく・へいじゃく)

つくる組紐の幅や長さ、模様・配色に応じた本数、長さ、色の糸を整えながらプラスチックの型に正確に束ねていきます。
オーダーや組紐の用途によって太さ、長さ、柔らかさなどのさまざまな要素が変わってくるので、基本的に作り置きはしないとのこと。

下撚り
下撚り

巻き取った糸の柔らかさなどを均一にするために、糸を回転させて撚ります。これにより「目(組紐のうろこ状になっているひとつひとつのこと)」のサイズもきちんと揃うので、組紐になったときにきれいに仕上がるのです。

組み上げ
組み上げ

下撚りした糸の束をボビンに巻き付け、機械に取り付けていきます。ボビンが溝に沿って盤上を規則正しくグルグル回っていく様子から、ボビンを取り付ける盤面のことを「兵隊」と呼ぶそう。

組み上げ
組み上げ
組み上げ

ボビンひとつひとつに付けるおもりや機械を回す速さ、ボビンを取り付ける場所などで、組紐の太さや柔らかさ、模様の出方などが大きく変わってきます。

加工
加工

組みあがった組紐を、それぞれの形に加工していきます。

加工

アクセサリーなどに広く用いられる小田巻や、

加工

こちらは、神社の飾りに見られる「総角(あげまき)結び」。
組紐を玉にしたり、房と結合したり。ひとつひとつを手作業で完成させます。

変わる時代、変わる組紐

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変わる時代、変わる組紐

変わる時代、変わる組紐

商品企画・営業を担当する中村さん

商品企画・営業を担当する中村さんによると、
「店頭に並んでいるもの以外にも企業さんや団体さんの依頼を受けて、マラソン大会のメダルの紐や腕時計のベルトなどもつくっています」とのこと。
他にも、大きいお寺の依頼を受けて袈裟の紐や境内の飾り紐もつくるのだそう。3本以上の糸を「組んで」つくる組紐は、見た目に美しいだけでなく、耐久性・伸縮性に優れているので、装飾品から実用的なものまで、さまざまな用途に対応できます。

技術を応用した新しいものづくり

複雑な結び目の飾り紐や、いろいろなパーツが組み合わさったチャームも、職人さんたちは鮮やかな手さばきで生み出していきます。それでも新しいものをつくるときは、はじめは戸惑ってしまうのだとか。

「(新しい案件に対して)職人さんたちも、やっぱり最初は嫌がるんですよね(笑)、なんで慣れてるストラップとかだけじゃなくてこんな難しそうなのもやらなきゃいけないんだって。それでも、なんとか職人さんにお願いしてつくってもらってやっていけば、技術は積もっていくじゃないですか」

もともとある技術で慣れているものをつくるだけでなく、その技術を応用した新しいものづくりにチャレンジすることで、昇苑くみひもは幅広い依頼を受けられる体制を整えてきました。しかし「組紐」という工芸品にとってそれは、ごく自然なことなのだと中村さんは言います。

その時代に合ったいちばん良い形で組紐を提供したい

「京都のいろいろな組紐屋さんにとっても、『組紐=帯締め』という認識のようだけど、うちはそうではないと思っていて。そもそも組紐ってそのずっと昔からあって、仏具の装飾品につかわれていたのがやがて武具につかわれるようになり、それが今度は茶道具の一部として用いられ、江戸時代ごろからやっと帯締めとしての組紐が登場するんです。そうやって形を変えてきたように、その時代に合ったいちばん良い形で組紐を提供したいと思っています」

組紐は、もちろんそれ自体が工芸品としての価値を持ちながら、さまざまな用途に合わせてその姿を変えてきたもの。帯締めという固定観念に囚われることなく、現代において活躍できる形にして組紐をつかってもらうことが重要、と語る中村さん。その言葉どおり、技術の蓄積は組紐の可能性を広げ「他所ではできないこともここでならできる」と、今ではさまざまなご依頼がいただけるようにまでなりました。

「今は雑貨としてのニーズがあるからそういう形。そして、その裏では目に見えにくい形でのニーズもあります。将来はまた別のかたちになってるかもしれませんが、その時代時代に求められるかたちで組紐をつかってもらえればいいなと思います」

昇苑くみひもで行われていたのは、機械と職人さんの手仕事を絶妙なバランスで組み合わせた、まさにオンリーワンのものづくり。
それは遥かな時の流れを経て、さまざまに姿を変え人々の生活や文化を支えてきた組紐の、次なる姿を探し求める旅路なのでした。