BONUS COURT

柔らかく目に飛び込んでくる色、モチーフを大胆に切り取ったかたち。子どもが描いたような無邪気なタッチ。思わず見入ってしまうほどに、個性豊かな作品を描くイラストレーター 後藤美月さん。素敵な巡りあわせで、PLAYCOURTではいっしょに革小物『きっときょうは、』シリーズをつくることができました。
今回は、独自の世界観を持つイラスト、そして後藤さんご本人の持つ魅力について、後藤さんと今回のものづくりに取り組んだ、ひとりのスタッフの目線からご紹介します。

絵本

本屋さんで雑誌や単行本を目にするたび、心が動かされるイラストがありました。
それは表紙にどーんとおおきく載っていたり、扉のページにちょこんと収まっていたり。一冊のどこにいても確かな存在感を放っていて、見つけるたびに私はその絵にくぎ付けになっていたのです。

そしていつしか、こんな絵を描くひとといっしょに仕事をしてみたいなぁとぼんやり思うようになったのは、とても自然なことなのでした。

PLAYCOURTで新しいものづくりをしよう!という企画が立ち上がったとき、プリントものの革小物が好きだった私は
「革をキャンバスに見立てて作家さんに絵を描いてもらう」という発想で、あの素敵な絵を描く後藤さんにお願いしたい!と考えました。

2017年5月5日

個展会場

相手は一方的にあこがれ続けていたイラストレーターさん。
意を決してご連絡すると、偶然にも近々京都で個展を開催されるということで、そこで直接ご挨拶できるはこびに。

いきなりのご本人にお目にかかるチャンスによろこびながらも、ご縁のちからに「なんとまぁ…」と驚くばかり。

来たる当日、ちいさな絵本屋さんに併設された六畳ほどの空間に、後藤さんはいました。

壁には大小さまざまな色とりどりのイラストが心地よいリズムで並び、その中で花や馬や鳥といったモチーフがいきいきと躍動します。

絵のタッチだけじゃなくテクスチャーや色彩も独特で、印象の強い素材や色をたくさんつかっているはずなのに決して明るすぎず、どこかしんとした静けさが横たわっているようにさえ感じられます。

まるで長年住んだワンルームのように落ち着いた個展会場に、確かに後藤さんの空間がひろがっていたのでした。

はじめてお会いした後藤さんは、ご自身の絵の雰囲気をそのまま纏っているような方でした。

後藤さんのことばや表情、しぐさから伝わってくるやさしさは、作品がもつあたたかさそのもの。さっそく、後藤さんとものづくりしたいという想いを伝えると、ぜひ!とのお返事が。

その後もご自身の絵についてのお話を聞いたり、どんな革をつかったアイテムがいいかなど打合せしながら後藤さんの作品を眺めていると、革という素材のもつ雰囲気に通じる佇まいがあって、どんな作品でも後藤さんのイラストなら味わい深いものができるんじゃないか?という自信がむくむくと湧きあがってくるのです。

そこで、題材やイメージなどは決めずに後藤さん自身が楽しんで描いてもらえるような絵をお願いすることにしました。

季節は夏なのに、クリスマスイブに靴下を吊るす子どものようにわくわくしながら、どんな絵ができあがるのか待ちわびるのでした。

2017年7月14日

それからひと月ほどが経ち、後藤さん描き下ろしの作品を見せていただく日が来ました。待ち合わせのカフェにストローハットをかぶった後藤さんが見えると、わたしたちのドキドキはピークに。梱包材をほどき、ついに待ちに待った作品たちとのご対面の瞬間です。

一目見た瞬間に、息をのみ、感動は考えるより先に声になってしまいました。

キャンバス

「かわいい!!」
包みの中から現れたどのキャンバスにも、鮮やかな色彩でダイナミックに表現された、わたしたちが大好きな後藤さんの世界がひろがっていました。

のびやかに描かれたモチーフの中に同居する、奥深くからじんわりと感じるようなおだやかな静寂。それこそが、後藤さんの作品の魅力だと思います。
でもそれは、暗くさびしい気持ちになるようなものじゃなく、明るくたのしい気持ちにさせてくれるもの。

「とても楽しくできました。でも、自由なぶんすごく悩みました。ああかな、こうかな、と考えているうちに、どんどんわからなくなって、ええい!という気持ちで持ってきました。笑」と、素敵な笑顔で話してくださいました。

今後やってみたいことなどについてもお話させていただきました。

その日は今回の企画についてだけでなく、今後やってみたいことなどについてもお話させていただきました。

後藤さんにとっても、革にイラストをプリントするというものづくりははじめてとのこと。

紙以外の異素材にプリントするものづくりにおもしろさを見出していただいたようで、壁一面の大きな布に自分の絵を大きくプリントする展示や、その布からシャツやエプロンなど身につけるものをつくるなど、楽しそうでうずうずしてくるようなアイデアをたくさん聞くことができた一日でした。

「きっときょうは、」シリーズ

その後も、イラストの選定や革の素材決め、型づくりなど、いろいろな工程を、後藤さんといっしょに進めていきました。そして完成したのがこの「きっときょうは、」シリーズ。

優柔不断なわたしに負けないくらい、後藤さんもものごとをじっくり考える方なので、「選択する」場面ではふたりで頭を悩ませましたが、そのぶん「これにしよう!」と決まったときの推進力は大きく、胸をはって自信作と言えるものづくりができました。

自分が「おもしろそう!」「やってみたい!」と思うことに正直な後藤さんのお人柄がわたしの気持ちも巻き込んでくれたようで、そんなふうに思うとわたしも、すこしゆかいな気持ちになるのでした。(小田島 果咲)