第2回暑を捨てよ、街へ出よう。

平安時代の女流作家・清少納言は随筆『枕草子』で、京都の気候について「冬はいみじう寒き、夏は世に知らず暑さ」と記している(そして「それがまたいい」とも。マジかよ)。京都の暑さ寒さの厳しさは、今も昔も変わらないようだ。
そして現在、季節は夏の盛り。日中は太陽に叱られているのかと錯覚するほど強い陽射しに晒され、日没後も湿気と熱気で茹だるような暑さである。四方を山に囲まれた盆地である京都に住む人間は、如何に夏を快適に過ごす方法を知っているかでマウントを取り合っている。部屋でクーラーをガンガンにかけて耐え忍ぶばかりが、夏ではない。さぁ、暑を捨てよ、街へ出よう。

手っ取り早い方法ならやはり避暑だ。暑い場所から逃げおおせることは、恥ではないうえに役に立つ。叡山電鉄出町柳駅から二両編成の小さな電車に揺られること30分弱、辿り着くのは貴船口駅。水を司る神さまを祀っていることで有名な貴船神社の入り口である。山深くの貴船は、同じ京都市内にあるとは思えないほど涼しく(肌寒さすら感じる)、まさに最高の避暑地。境内で水占いに興じるもよし、神社の傍の京料理屋で夏の間だけ出ている川床にて流しそうめんをすするもよしである。
暑いと思うから暑いんや——そんな暴論もまぁ、一理ある。「心頭滅却すれば火もまた涼し」なんてことわざもあるぐらいだし、暑さから逃げるんじゃなく精神を鍛えるべきなのかも……そんな気骨をお持ちの方におすすめしたいのが座禅だ。結跏趺坐(けっかふざ)を組み半眼で心の凪を保つことで、「暑い」という雑念を棄てられるだけでなく、悟りの扉に近づくことも出来る。京都にいくつかある座禅体験ができるお寺のなかでも、京阪・JR東福寺駅からほど近い勝林寺はビギナー向け。1時間ほどで基本的な座禅のやり方が身につくばかりか、住職さんのおもしろい説法とお茶菓子まで頂ける(座禅のおもしろさについては改めてきっちり書きたい)。
視覚から涼しくなることだって可能だ。各線京都駅から徒歩15分ほどの距離にある京都水族館は、けっこう穴場の納涼スポット。べらぼうに大きいオオサンショウウオを眺めながら、日がな一日涼んでいる休日も悪くはない。2012年に開業したばかりでとてもキレイだったり、イルカショーではプロジェクションマッピングが使われていたりで、想像以上に快適で興味深い水族館体験ができる。

他にも、京都に数ある喫茶店でクリームソーダを飲んでみたり、中華屋さんに入って普段あまり食べない冷やし中華を頼んでみたり、夕方から銭湯でひとっ風呂浴びてみたり。ちょっとのモチベーションでいかようにも機嫌よく過ごせるのが、この街の夏だ。必要なものはひとつだけ、暑さごと愉しむ心意気である。

暑を捨てよ、街へ出よう。
筆者・ヨウイチ