第12回詣でれば京(みやこ)

年が明けた。三が日が終わった。正月休みも過ぎて仕事や学校が始まるが、なかなか年明けムードは抜けきらないものだ。一月って、いつもそんな感じで過ぎていく気がする。そして人々は新年の目標をすこんと忘れる。それなら、正月が終われば一月は何もないのか?そんな消化試合みたいな月なのか?と言うと実はそうでもない。専ら近畿一円について言えば、一大イベント「えべっさん」が我々関西人を待ちかまえている。
「えべっさん」こと『十日戎(とおかえびす)』は毎年1月10日前後に行なわれるお祭りである。その名のとおり七福神の一柱である恵比寿様に商売繁盛や五穀豊穣、或いは大漁などのご利益を祈願するもので、初詣で破魔矢をもらうように「福笹」という縁起物を受け取る。関東で言うところの「酉の市」のようなもの、と言われるが、関係性は全くない。
日本各地に十日戎をおこなう神社はあるのだが、中でも大々的に行われる3つの有名な神社が関西にある。毎年1月10日の早朝に参拝者たちが境内を疾走する「福男選び」で有名な、兵庫の西宮神社(日本全国にある「えびす神社」の総本社)。「商売繁盛笹で持ってこい」の掛け声や毎年公募で選出される「福むすめ」などで賑わう、大阪の今宮戎神社。そして、京都の京都ゑびす神社である。

祇園界隈の南方にある京都ゑびす神社はそこまで大きな神社ではないものの、今から800年以上前に建立された歴史を持つだけあって、境内には確かに厳かな空気が流れている。かと思えば、鳥居には恵比須様の顔のレリーフ(?)付きの福箕が据えられており、ここにお賽銭を投げ入れると願いが叶うというエンタメ性も持ち合わせた、何とも味のある神社だ。
でも、やっぱり西宮神社、今宮戎神社に比べると華がないような……という皆さんの声が聞こえる。なるほど、どちらも三日間で百万人超の参拝者が訪れるし、そもそも神社の規模からして大きく違う。「福男選び」や「福娘」といった、ド派手な催しもないかもしれない。しかし、それらの大味な演出ではなく、京都ならではのはんなりとした魅力の数々が確かに存在するのだ。

まず、京都ゑびす神社の十日戎は他の二社に比べて期間が長い。西宮神社、今宮戎神社の十日戎が1月10日とその前後一日ずつの三日間であるのに対し、京都ゑびす神社は1月8日から12日までの五日間開催される。この五日間で実に京都らしい華やかな十日戎が繰り広げられるのである。
8日・9日の目玉は「宝恵かご社参」。ほど近くにある太秦映画村から出発した籠が神社を経由し、各デパートや商店に福笹を配りまわるのだが、その籠に乗り込むのは芸妓姿の東映の女優さんたち。10日には福娘として奉仕、福笹の授与もあり、未来の大女優と交流できる機会として人気を博している。11日は本物の舞妓さんが福笹と福餅を配ってくれるという、祇園ならではのやんごとない演出も。

こう見てみると、どこがどこより優れる劣るといったこと以上に、三都市三様の十日戎があっておもしろい。兵庫のように猛々しいわけでもなければ、大阪のように商魂たくましいわけでもなく、京都はいかにも京都らしく年明けを慶び、一年の繁栄を願うのだ。
ちなみに、十日戎に福笹を配るという文化はこの京都ゑびす神社が発祥である。そう考えると、今宮戎神社のアレンジは「ザ・大阪」すぎる。開催期間中に三都市制覇してみるのも楽しそうではないか。

詣でれば京(みやこ)
筆者・ヨウイチ